インドネシアの魅力と成長への足かせ
- Site Manager
- 2022年9月15日
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中国の次に進出するべき国として、インドネシアを検討される企業様が増えているようです。インドネシアは、世界で第4の人口規模を誇り、名目GDPはASEANトップです。このインドネシア市場の魅力は何か、また、国が抱える課題は何かをざっくり整理してみましょう。

成長ドライバーは中間層
世界銀行が2020年に発表したリポート「Aspiring Indonesia: Expanding the Middle Class」によると、2002年以降中間層による消費は、年率12%の割合で拡大し、国全体の世帯消費の半分近くを占めるまでにインドネシア経済成長を牽引してきました。そして、この中間層の人口の更なる拡大が、これからインドネシアが高所得国に押し上げるために不可欠としています。つまり、今後も続くであろうインドネシア中間層の旺盛な消費意欲が、インドネシア市場の魅力と言えるでしょう。
言い換えると、経済成長の過程において、輸出に経済を依存していた日本、韓国、台湾などが陥った「中所得国の罠(賃金上昇により価格優位性が落ち、結果として競争力を失う現象)」をものともしない、力強い「内需」が今後もインドネシア経済を牽引していくであろうことを予見しています。ちなみに、このリポート作成時の中間層の人口は、1億15百万人で、インドネシア全体の人口(約2億7千万人)の4割強を占めます。(写真は、ジャカルタの大型ショッピングモール)
経済発展の足かせ
しかし、インドネシアには今後の成長の阻害要因も指摘されています。具体的には、インフラ整備の遅れ、汚職、人材教育が課題なのです。

進まないインフラ整備
まず、首都である「ジャカルタ」で想起される「渋滞」。インフラ整備の遅れを端的に示します。公共交通機関は、バス(トランスジャカルタ)やアンコットなど、道路を利用するものが多く、渋滞の原因にもなっています。例えば、トランスジャカルタの専用レーンにより、1車線分狭くなっています。
当然のことながら、インフラ整備が遅れているとは言え、渋滞解決に向けた整備は進んでいます。市内には、2019年にMRTとLRTが開業、また高速道路などの整備(南ジャカルタのAntasariからデポックのSwanganが2020年に開通)が継続されています。また、2020年のパンデミックで一旦渋滞は無くなりました。しかし、2022年現在、主要幹線道路では、奇数偶数制度(Gajil Genap、曜日が偶数の場合、特定の時間帯においてナンバープレートが偶数の車両のみが通行可能。奇数の場合も同様)が復活しました。このように、まだ渋滞解消には至っていません(冒頭の写真は2019年3月撮影)。むしろ、同じ東南アジアの都市タイ・バンコクと比較すれば、公共交通機関整備は圧倒的に遅れていると言えるでしょう。そして、この交通インフラの遅れは、ロジスティックスに深刻な影響を及ぼしているのです。
首都移転は渋滞緩和になるか
インドネシア政府は、2024年から首都をジャカルタからカリマンタン島東側への移転を開始することを決定しました。この理由としては、ジャカルタ北部の地盤沈下や大気汚染の解消としているようですが、行政機関の移転だけで地盤沈下と大気汚染解消されるとは考えづらいのではないかと思われます。むしろ、頻繁に起こるデモ(関連庁舎前などで行われることが多い)や要人接待のための渋滞が無くなるため、むしろ渋滞緩和の一手となることが期待されます。

ちなみにインフラ整備の遅れは、公共交通機関整備だけでなく、上下水道(水道水は飲用できず、下水整備の遅れが豪雨時の冠水の一因)、ガス(都市ガスはなく、全てプロパンガス)、ごみ収集などインフラ整備や、さらには公共サービス整備の遅れが目立ちます。
蔓延る汚職
これらインフラ整備の遅延の原因とされているのが、政府側のリーダーシップの欠如と高級官僚などによる汚職です。前者については、インフラ整備には自治体間や既得権益受益者間の調整がつきものとも言えるのですが、それも含めインフラプロジェクトを強力に推し進めるリーダーシップの不在が原因と指摘されています。また、財源不足の原因ともなるのが、汚職です。Indonesia Corruption Watchは、インフラプロジェクトに関して、2015年から2018年までの間に431件の汚職が確認され、2018年単体の損失額は1.1兆ルピア(約99億円)にのぼったと報告しています。(高級官僚などによる汚職はインフラプロジェクトだけではないですが、多額のお金が動くため顕著になりがちとも言えます。)
官僚による汚職は、富の平等な分配を妨げ、引いてはインドネシア経済の成長を妨げていると思っているインドネシア人は意外に多いものです。これは、例えば、TVのニュースなどで、ジャカルタの高級住宅地(メンテン)にある某官僚の自宅にインドネシアの国税庁が踏み込んだ際に、数多くのスーパーカーが地下にあったなどという汚職に関する報道などの影響だと思われます。

賃金上昇率に見合わない教育水準と労働生産性
さて、課題の3番目として挙げられるのが、これまでの高く推移してきた平均賃金上昇率です。インドネシアの平均賃金上昇率は、2013年から2020年までの間、25%〜7%強で推移してきました。この賃金上昇率は、実に8割を超える現地の日系企業が経営上の問題点として挙げるまでになっています(ジェトロ調べ)。

一方、インドネシアの教育水準は、OECD平均の7割程度(15歳を対象にしたOECDによる国際的な学力調査)であり、社会的に効果的に能力を発揮できる学力水準に達していないと指摘されています。しかも、勤労意欲で見てみても、雇用保護が手厚く、OECDによる雇用保護指標はインドネシアがトップで群を抜いており、これが勤労意欲を阻害しているとも指摘されています。結果としてここ10年でも賃金上昇率と労働生産性上昇率の差分はASEAN諸国で最も大きい状況になっています。
期待されるオムニバス法の効果
2021年から施行された雇用創出オムニバス法により、各「市」で定めていた産業別最低賃金が撤廃され、産業に関係なく各「県」で最低賃金が決められることになりました。これにより、一つの「県」に存在していた最低賃金が高い「市」、安い「市」などの格差が無くなり、結果として賃金上昇率が抑えられる効果が期待されています