はじめに
インドネシアは成長著しいアジアの市場の一つですが、成功するためには事前の徹底的な分析が欠かせません。さらに、他国のビジネスチャンスも視野に入れることが重要です。本記事では、弊社のインドネシア進出支援の一例として、インドネシア進出を検討する際の外部・内部分析を、アンゾフのマトリックス、G-PEST、SWOT分析といった分析手法(フレームワーク)を交えて説明したいと思います。
1. アンゾフのマトリックスとは
アンゾフのマトリックスは、1957年にロシア出身の経営学者イゴール・アンゾフによって提唱された、企業の成長戦略を体系的に検討するためのフレームワークです。このマトリックスは、企業が成長戦略を策定する際に用いることができ、4つの主要な戦略オプションを検討することになります。これにより、果たして海外進出が、次に取り組むべき打ち手かどうかを判断する材料となります。
マトリックスの構成
縦軸: 市場(既存市場、新規市場)
横軸: 製品(既存製品、新規製品)
これにより、以下の4つの成長戦略が導き出されます。
市場浸透
定義: 既存市場で既存製品のシェアを拡大する戦略。
アプローチ: 現在の市場において販売促進活動を強化し、競争力のある価格設定、顧客サービスの向上などを行います。この戦略は、市場が成長している場合や、未開拓の市場セグメントが存在する場合に有効です。
新市場開拓
定義: 既存製品を新しい市場に展開する戦略。
アプローチ: 地理的な拡大や新しい市場セグメントへのアプローチが含まれます。例えば、新たな地域や国への進出、異なる顧客層へのアプローチなどが挙げられます。
新製品開発
定義: 既存市場向けに新製品を開発する戦略。
アプローチ: 既存の顧客基盤を活用して、新製品を導入し、売上の拡大を図ります。例えば、現行製品の改良や新しい製品ラインの導入などが含まれます。
多角化
定義: 新市場に新製品を投入する戦略。
アプローチ: 既存の事業領域を超えて、新しい市場と新しい製品の組み合わせに挑戦します。関連多角化(既存のビジネスに関連する分野への進出)と非関連多角化(全く新しい分野への進出)があります。また、このアプローチを取る場合、シナジー有無の視点もポイントとなる。
このようにアンゾフのマトリックスは、企業が現在どのフェーズにいるかを理解し、次の成長のための打ち手を検討するのに有用なツールとなります。この分析には社内の状況を客観的に見ることが必要なため、第三者の視点の活用を検討した方が良いケースもあります。
2. 外部分析の重要性
海外進出を検討する際には、ターゲット市場だけでなく、他国のビジネスチャンスも視野に入れることが重要です。そこで役立つのが「G-PEST」分析(PESTに地理的要因を加えたもの)と、内部分析と共に行う「SWOT」分析です。
G-PEST分析: 通常のPEST分析(政治 (Political)、経済 (Economic)、社会 (Social)、技術 (Technological) )に対し、G(地理的要因)を掛け合わせ、地政学的や地経学的等にも分析する 弊社独自の手法です。例えば、地経学的に、「越境EC」が中国では機能してもインドネシア等では機能しづらいことを事前に分析・予測することが可能になります。ここでは、単純に地理的要因を分けて、インドネシアと他国(例:ベトナム、タイ)との比較を行います。
(簡単な分析の一例)
地理的要因:
インドネシア: ASEAN域内では、海上輸送のハブとしての役割が大きい。アジア全体へのアクセスが良好。
ベトナム: 東南アジアの中心に位置し、中国との貿易が活発。
タイ: 陸上輸送の要衝であり、アセアン諸国主要国との連携が強い。
→地経学的には、タイとベトナムは、いわゆるメコン経済圏内にあり、市場を一国で括らない考え方もある。
政治的要因:
インドネシア: 政治安定性は高いが、規制の変動がある。
ベトナム: 政府のビジネス支援が強いが、一党制の影響がある。
タイ: 政治不安が時折発生するが、ビジネスフレンドリーな環境。
経済的要因:
インドネシア: 経済成長率が高く、人口も多い。
ベトナム: 労働コストが低く、輸出主導の成長。
タイ: インフラが整備されており、観光業が盛ん。
社会的要因:
インドネシア: 多様な文化と宗教背景を持つ。
ベトナム: 若い労働力が豊富で教育水準が向上。
タイ: 観光業による多文化受容性が高い。
技術的要因:
インドネシア: テクノロジーの普及は進んでいるが、インフラに課題。
ベトナム: IT分野の成長が著しい。
タイ: インフラが整備されており、テクノロジー導入が進んでいる。
これらの要因は列挙するにとどめず、G-PEST分析により、それぞれの関連性を総合的に見ることで、進出の対象国が浮かび上がってきますし、次に述べる内部分析により候補国がより明確に絞られてくることになります。
3. 内部分析の重要性
外部環境を理解するだけでなく、内部リソースの評価も重要です。リソース評価や、自社の強みと弱みを把握・確認し、外部分析と併せてSWOT分析を行い、Key Success Factor「重要成功要因」などを特定し、戦略立案に落とし込みます。
SWOT分析: 自社の強み (Strengths)と弱み (Weaknesses)の把握、そして外部環境としての機会 (Opportunities)と脅威 (Threats) を明確にします。ポイントは、それらを総合的に判断し、打ち手(仮説)を考えるための手段であるということです。
強み: 自社の競争優位性や独自技術。
弱み: リソースの制約や経験不足。
機会: 新市場の潜在顧客や成長セクター。
脅威: 競争激化や規制変更。
4. インドネシア進出における鍵となるポイント
これまでのフレームワークだけを見ても、それらの分析のためには、広範な情報収集が極めて重要であることがお分かりいただけたと思います。さらに、インドネシア進出を成功させるためには、以下のポイントを押さえておくことも重要です。
現地文化の理解: インドネシアの文化や商習慣を理解すること。
ローカルパートナーの重要性: 現地で信頼できるパートナーを見つけること。
法規制の確認: インドネシアの最新の法規制を把握・理解すること。
5. 弊社のサポート
株式会社マークス・インテリジェンスは、これらのフレームワークなどを活用し、貴社のインドネシア進出を成功に導くための総合的なサポートを提供します。必要な情報提供や調査の提案から、具体的な市場調査、パートナー探し、法務サポート、現地視察ツアーの企画まで、一貫して支援いたします。まずは、インドネシア進出が正しい選択かどうかを見極めるためにも、まずはお気軽にご相談ください。