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なぜ、インドネシアの市場調査では、定量調査を「後回し」にするのか?


インドネシアの市場調査

海外進出を検討する際、「まずは市場調査だ!」と考える方は多いでしょう。しかし、一口に調査と言っても、その種類は多岐にわたります。特に規制の多いインドネシアの市場調査には、進出先の関税や規制に関する調査、商品の流通経路に関する調査、競合他社の調査など、様々な調査がありますが、その中でも特に重要なのが「消費者調査」です。


インドネシアの市場調査

消費者の「本音」を掴む定性調査

消費者調査は、欧米企業が特に重視しており、多額の予算を投じています。その手法も確立されており、私も日米欧の消費財メーカーと共にで豊富な経験を積んできました。


消費者調査の中でも、消費者のインサイト(潜在的なニーズや欲求)を掴むためには、定性調査が不可欠です。一方、定量調査は、定性調査で見出したインサイトを検証したり、市場規模を把握したりする際に役立ちます。


定性調査が重要な理由は、インサイトが潜在的なものであるためです。熟練したモデレーターが様々な角度から質問したり、グループディスカッションを実施したりすることで、初めて消費者の本音を引き出すことができます。そのため、定性調査を行う際は、事前に仮説を立て、モデレーターと共有しておくことが重要です。そして、その仮説を検証しながら、想定外のニーズも探ることが、海外市場攻略の鍵となります。


インドネシアの市場調査

定量調査の落とし穴:数字だけでは「売れる」は見えない

一方、定量調査は、質問票に基づいて行われるため、特定のセグメントの規模を測ることは得意ですが、インサイトを掴むことには不向きです。例えば、「この製品の購入意向はどの程度か?」「いくらなら買いたいか?」といった予め回答を想定した質問では、消費者の深いインサイトは得られません。なぜなら、回答は質問票の選択肢に限定されてしまうからです(自由回答(FA)欄があったとしても)。


「売れるか売れないのか」を知りたいだけの場合でも、定量調査は危険です。例えば、購入意向を測るために、消費者に製品情報を過剰に提供した結果、高い購入意向(例えば、トップ2ボックスの合計値が高い)が得られたとしても、実際に発売したら全く売れなかったという失敗例は少なくありません。製品の成功を判断するには、安易なアンケート調査だけでは不十分です。


日本製品の海外展開こそ、定性調査が必須

「製品のどの点をアピールするか?」「どんなネーミングにするか?」といった問いは、日本市場でも重要ですが、情報量が限られる海外市場ではさらに重要です。製品のポジショニングを決めるためのインサイトは、定性調査によってのみ得られます。拙速に定量調査を行うと、時間とコストを無駄にするだけでなく、誤った判断を招く可能性もあります。


海外市場では、文化や国民性の違いも考慮しなければなりません。例えば、アンケートの回答傾向は国によって異なります。日本人は中間的な回答を選びがちですが、東南アジアでは極端な回答に偏り、高評価を出しやすい傾向があります。そもそも、平均値(ノーム値)が高いため、日本人の感覚で結果を判断すると、実際よりも良いスコアが出てしまうことがあります。このような違いを理解せずに定量調査の結果を解釈すると、誤った判断をしてしまう可能性があります。


インドネシアの市場調査

まとめ:定性調査と定量調査両方が必要

海外市場で成功するためには、消費者のインサイトを深く理解することが不可欠です。そのためには、まず定性調査で消費者の本音や潜在的なニーズを探り、それに基づいてセグメンテーションを行います。次に定量調査で各セグメントの規模や特性を把握し、定性調査の結果を検証することが重要です。定性調査と定量調査は、それぞれ異なる役割を担っており、両者を組み合わせることで、意味のある消費者調査となるのです。

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